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がん免疫細胞療法の歴史

免疫学はもとより、遺伝子工学、分子生物学の進歩に伴って、がん免疫細胞療法も飛躍的な進歩を遂げています。

体内の免疫環境を整える-第一世代の免疫療法

今から30~40年前はまだ免疫の働きがよく分かっておらず、1970年代に登場したシイタケやカワラタケなどから抽出した多糖類のレンチナンやクレスチン、結核の予防ワクチンであるBCGなどは、免疫システム全体を強化するという漠然とした使われ方をしていました。

現在では、レンチナン、クレスチン、BCGはそれぞれ医薬品として認可され、作用機序も分子レベルで解明されています。作用としては、レンチナンはマクロファージT細胞NK細胞を活性化してがん細胞を攻撃し、クレスチンはNK細胞の活性化やインターフェロン、インターロイキンの増強などに作用することが分かっています。

しかしながら、こうした第一世代の免疫療法は、これでがんが治るというよりも、体内の免疫環境をよりよいものに整え、他の免疫療法の効果を高めるのに役立つものと考えたほうがよいようです。

第二世代の免疫療法-サイトカイン療法

80年代に入って登場したのがインターフェロンなどのサイトカイン療法です。サイトカインは免疫細胞同士が情報を伝え合うときに使われる情報伝達物質で、他の免疫細胞の活性化や増殖を促します。中にはがんを直接攻撃するサイトカインもあり、その作用は実に多様性に富んでいます。

例えば、ヘルパーT細胞が出すインターフェロンγ(IFN-γ)は、CTL細胞(細胞障害性T細胞)に効果的に作用し、樹状細胞が出すインターロイキン12(IL-12)は、NK細胞やT細胞の免疫反応を高めたり、これらの細胞からのサイトカインの放出を促したりします。

こうしたサイトカインを活用したがん治療薬が開発され、当時、インターフェロンなどのサイトカイン療法は夢の抗がん剤と騒がれたものの、思ったほどの効果を上げることができませんでした。現在では改良されて、局所がんへの投与やサイトカインの遺伝子を使った治療が行われています。

細胞レベルの免疫療法―活性化リンパ球療法

第三世代の免疫療法として登場したのが、患者からリンパ球を取り出し試験管の中で数を増やすなど増強して再び体内に戻す「活性化リンパ球療法」です。敵を特定せずに無差別に攻撃する自然免疫(非特異的免疫)反応を示すNK細胞が主役となる免疫療法です。

活性化リンパ球療法は、がんの進行で水が溜まる腹水や胸水をやわらげるという報告があり、一時期夢の治療法のようにもてはやされました。しかし、特にがん細胞に照準を定めずに、いわば攻撃する武器だけを大量に作って体内に入れても、変身したがん細胞には思ったほどの効果が得られない場合もありました。
自然免疫(非特異的)システムを活用した免疫療法は、不特定のがん細胞を攻撃する以外にも、免疫全体を上げることに効果的な治療法といえます。

がん細胞だけを狙い撃ち-抗体療法

90年代に入ってから登場したのが、がん細胞に狙いを定めて攻撃を仕掛ける治療です。がん細胞には正常細胞とは異なる独自の目印(がん抗原)があることが分かったため、がん細胞だけをターゲットとして攻撃を仕掛けることができるようになりました。
また、がん細胞だけを狙い撃ちする免疫反応は、自然免疫(非特異的免疫)と獲得免疫(特異的免疫)が連携することで行われることもわかってきました。

そこで開発されたのが「抗体療法」です。がん抗原を標的に攻撃を仕掛ける武器(抗体)を体外で大量に作り、患者に投与するという治療法です。
現在、乳がんに使われる抗HER2/neuと悪性B細胞に対して使われる抗CD20抗体は健康保険が適用された標準治療となり、T細胞白血球やリンパ腫に対して用いられるCD25抗体はアメリカで使用されています。

自然免疫と獲得免疫の連携プレーを促す-樹状細胞療法

最も新しいがん免疫細胞療法は、自らの免疫システムを活性化させ、正常細胞を傷つけることなくがん細胞のみを攻撃することができる分子標的療法です。
分子標的療法では自分の免疫細胞を用いたがんワクチン療法やがん細胞だけを狙い撃ちする治療薬などが開発されています。
その中でも最先端といえる「樹状細胞療法」は、敵を無差別に攻撃する自然免疫(非特異的免疫)と、敵を特定し、武器を作って攻撃を仕掛ける獲得免疫(特異的免疫)の橋渡し役をする樹状細胞を利用したがん免疫療法です。

そのメカニズムは、樹状細胞は敵を見つけると駆けつけて戦い、相手を食べて消化すると抗原提示をして獲得免疫(特異的免疫)グループに敵の姿を伝えます。そして今度は、敵の情報を得て2~3週間かけて増殖したCTL細胞(細胞障害性T細胞)などの獲得免疫グループが敵を狙い撃ちするという連携プレーが行われます。

ただ残念なことに樹状細胞は白血球の中でも数が少なく、普段は樹状細胞になる前の段階の前駆細胞(単珠)としてしか存在していません。そのためがん治療では、患者の血液からアフェレーシスという成分採血によって単球を取り出し、樹状細胞を培養して患者の体内に戻すという方法が行われています。

アフェレーシスは2時間程度の時間をかけ、約6回分の治療に必要な量を採取するため、患者に負担がかかります。しかし、アベ・腫瘍内科・クリニックではアフェレーシスが不要な新たな方法を確立し(特許取得中)、わずか25ccの採血で樹状細胞ワクチンを作ることが可能になりました。単球を凍結せず、1回の治療に必要な分だけを採取するので、鮮度の高いがんワクチンを作成できます。

技術の進歩とともに、がん免疫細胞療法は患者にとってより負担の少ないものへと進化しています。




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